おいしいあんずの選び方

あんずは加工に適したものと生食向けのものがあります。ジャムにするのか、シロップ漬けに使うのか、それとも生のまま味わうのか、用途によって選び方が少し異なります。ちなみに、加工用は店頭で「あんず」とだけ表記され、生食用は「ハーコット」や「ゴールドコット」など品種名が表記されていることが多いです。

ジャムはやわらかめ、シロップ漬けはかため

ジャムを作るなら少しやわらかめのもの、シロップ漬けや果実酒に利用する場合は、ややかための果実が適します。ただ、あんずはパックに入った状態で売られていることが多いので、店頭で1つずつ果実をさわって確かめることはできません。そこで果皮の色を確認してみてください。

果皮の色が濃いオレンジものはやわらかく、色が薄めのものは果実がかたいことが多いので、ジャム用なら濃いオレンジ色、シロップ漬けやあんず酒は明るいオレンジ色のものがよいでしょう。このとき、なるべく同じ色味のものが入ったパックを選ぶと加工しやすいです。

なお、ジャムにする場合は果実がかたくても長めに加熱すればとろみが出るので問題ありません。しかしシロップ漬けやあんず酒にやわらかい果実を使うと、果肉が崩れてきれいに仕上がらないことがあるので注意が必要です。

平和

明るいオレンジ色をした「平和」というあんず。ややかためでシロップ煮やあんず酒によさそうな熟度です

新潟大実

この濃いオレンジ色の「新潟大実」は、果肉が少しやわらかく、ジャム用に加熱すると短時間で果肉が崩れました

生食向けのものは完熟果を

生食するならしっかりと熟したものを選んでください。生食用として流通している「ハーコット」や「ゴールドコット」のほか「信山丸」や「信月」「信州大実」なども熟していればおいしく食べられます。

果皮が濃いオレンジ色をしていて、果実に少しやわらかさがあり、甘い芳香があれば食べ頃。完熟した生食用あんずは、まろやかな甘酸っぱさが楽しめます。

ハーコット

生食向けの「ハーコット」。これは果皮の色が濃く、糖度は11度前後で、酸味が少なくておいしかったです

信月

これは「信月」というあんずです。これも糖度が11度以上あり、酸味が少なくてやさしい甘酸っぱさ。生食とジャムの2通りで堪能しました

緑色が残ったものはかたい

日差しをたっぷり浴びたものは、果皮に赤みを帯びることがあります。ジャムや生食用なら、赤い果実がたくさん入ったパックを選んでもよいでしょう。

逆に、黄緑色が残っているものは、糖度が低かったり、酸味が強くて果肉がかたいことがあります。ただ、あんずは収穫適期が短く、やわらかくなった完熟果は輸送性がよくありません。そのため完熟手前で収穫されるのが一般的です。

早採りしたものは果実の着色が薄くてかたいですが、このようなあんずを購入した場合でも、常温で1~3日ほど置いておくと、果肉にやわらかさが出てきます。

信州大実

完熟手前で収穫した「信州大実」。このままだと酸味は強いですが、数日ほど置いておくとオレンジ色に近づき、酸味も少しずつ抜けていきます。これは数日後にジャムにしました

信州大実

この「信州大実」は濃い赤色に染まっています。生のままでもジャムにしてもおいしかったです

ふっくらとして果皮がなめらか

加工用でも生食用でも、ふっくらとした丸い形をしていて、果皮に張りがあるかどうかをチェックしましょう。肌がすべすべとなめらかで、実が締まっているものが良品です。

山形三号

これは「山形3号」という品種です。ふっくらとかわいらしい形をしています。生食でも食べられますが、加工したほうがおいしくなるのでジャムにして味わいました

果皮に傷や変色がないもの

変色が見られるものや、やわらか過ぎるものは鮮度が低下しています。また果皮に傷が目立つものもなるべく避けましょう。

あんずは皮をむかないので、茶色い傷が付いているものをそのままジャムなどに使うと、仕上がりの色味に影響します。傷のあるものをやむを得ず使う場合は、傷の部分を包丁で削いでから加工しましょう。

信州サワー

この程度の擦れなら問題ないですが、派手に傷がついているものは削いでから使いましょう。ちなみにこの「信州サワー」は糖度が12度以上ありました

あんずの一番甘い部分はどこ?

当サイトがこれまでに計測したあんずの糖度データをもとに、果実のどの部分が甘味が強いのかをイラストで紹介しています。また平均糖度も計算しました。

あんずの平均糖度は約11度となりました。甘味は軸側よりも、お尻側のほうがやや強い傾向にあります。なお測定した個数が少なく、計測した果実には加工用の完熟前のものも含まれています。平均値は参考程度にご覧ください。

あんずの糖度分布

平均糖度 約11度

●このページでは実際に食べた経験も踏まえて、一般的な選び方をまとめています。しかし糖度やおいしさを保証するものではありません。記事を参考にしたのにおいしくなかった場合はどうぞご容赦ください。
●糖度の数値は当サイトが独自に計測したものです。「Brix値(ブリックス値)」は「%」で表されますが、ここではわかりやすく「度」で表示しています。また、使用している簡易糖度計では、糖分だけでなくクエン酸などの「酸」も計測されてしまうため、必ずしも糖分だけの結果とはなりません。それを踏まえたうえでご覧ください。
●糖度が高い=おいしい、ということではありません。しかし、平均値よりも糖度が高いものは実際においしく感じるものが多いです。
●糖度を測定した個数は約10~200個と果物によって異なります。品種の重複はありますが、例えばあんずは10品種(12個体)で、いちごは91品種(118個体)を計測しています。
●糖度分布があるイラストは、わかりやすくするため大げさな色分けにしています。