あんず 杏(杏子) Apricot

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基礎データ DATA

アンズの概要

あんずの果実

アンズは酸味が強いため、生食よりもジャムや洋菓子などに加工されることが多い果物です。アンズを買ったらジャムやシロップ漬けにするという人は多いのではないでしょうか。でも「ハーコット」など酸味の少ない生食用品種もあるので、ぜひ生でも楽しんでみてください。

一般的に、ヨーロッパで品種改良されたアンズ(アプリコット)は比較的甘く、アジア地方で品種改良されたアンズは酸味が強いといわれています。

なお、主産地の1つである青森県では「八助」というアンズが作られていますが、これはおもに梅干しのように加工されるため、青果としてはほとんど出回っていません。八助はアンズと梅の交雑種といわれ、大きくて甘味があるのが特徴です。「八助梅」とも呼ばれています。

アンズの歴史

あんずの果実 あんずの花

アンズの原産地は中国北部、中央アジア、ヒマラヤ西北部といわれています。中国では2000年も前(一説には4000年以上前)から種の中にある「杏仁(きょうにん)」を収穫するために栽培されていたようです。取り出された杏仁は、そのまま食べるのではなくおもに漢方薬として利用されていました。その後、中国からヨーロッパ、中東、アフリカへと渡り、18世紀頃にアメリカに渡ったとされています。

日本に渡ってきた時期は定かではありませんが、平安時代の書物に「カラモモ」という和名で登場していることから、その頃には栽培が行われていたと考えられます。ただし、当時は中国と同じように杏仁を収穫するための栽培であったようです。

日本でアンズの果実を食べるようになったのは、明治時代になってからのことで、本格的な栽培が行われたのは、ヨーロッパ品種が積極的に導入された大正時代からといわれています。

アンズの栄養と効能

おもな栄養成分(可食部100g中)

βカロテン当量(1500mcg)、カリウム(200mg)

期待される効能

高血圧予防動脈硬化予防脳梗塞予防心筋梗塞予防、老化抑制、疲労回復、冷え性、ぜんそく・咳止め(杏仁部)

アンズはβカロテンの含有量が非常に多いのが特徴です。果物では赤肉メロンに次いで2位、干しアンズであれば赤肉メロンを大きく引き離してトップの含有量(5000mcg)になります。βカロテンは体内でビタミンAとして働き、老化抑制(アンチエイジング)や視力の保持、強い抗酸化作用により脳卒中や心筋梗塞の予防にも効果があるといわれています。同じく高血圧予防に役立つとされるカリウムも多く含みます。

また、アンズにはリンゴ酸やクエン酸も多く含まれ、疲労回復にも効果があります。また、血行をよくするので冷え性にも効くといわれています。

アンズの種にある杏仁は、東洋医学では古くからぜんそくや咳止めに効果があるといわれていました。これは「アミグダリン」という成分によるものです。ただし、アミグダリンには毒性があるため、専門家の指導を受けずに杏仁を食べたりしないでください。

より詳細な栄養成分については、「栄養成分(グラフ)」もしくは「栄養成分(一覧表)」に掲載しています。

アンズの種類

平和

平和

大正時代に長野県埴科郡(現:長野県千曲市)の杏園で発見され、第一次世界大戦の終結を記念して命名された品種です。酸味が強いので、おもに加工用として栽培されています。果実は橙色の円形で、果重は50~70g前後。6月下旬から7月上旬頃に出荷されます。

昭和

昭和

長野県のあんず園で昭和15年頃に発見された品種です。収穫時期は「平和」の1週間ほどあとで、7月上旬~中旬頃。酸味が強いためシロップ漬けや砂糖漬け、ジャムなどに適しています。サイズは40g程度です。

新潟大実

新潟大実

昭和初期から栽培されている新潟大実(にいがたおおみ)は、新潟が原産で酸味が強く、おもにジャムやシロップ漬け、干しアンズなどの加工用として利用されています。果実は円形の淡橙色で、果重は40~60g前後です。また「新潟大実」と「チルトン」を掛け合わせた「信月」という品種もあります。収穫は7月上旬頃から。

信州大実

信州大実

1980年(昭和55年)に登録されたアンズで、果実が80~100g前後と大粒なのが特徴。円形で果皮・果肉ともに橙色、香りが強くて酸味は比較的少なめです。糖度があるので生食・加工を兼用することができます。シーズンは7月中旬頃。なお、信州大実は「アーリーオレンジ」と「新潟大実」を交配したものとされていましたが、DNA解析の結果によりこれは誤りではないかといわれています。

山形3号

山形3号

山形原産の品種で昭和初期から長野県で栽培されています。果実は円形で、黄色がかった橙色をしており果重は60g前後。甘味があるものの酸味が強いため、おもに干し杏やジャムなどに利用されます。出荷は6月下旬頃から。「山形3号」と「甚四郎」を交配して1990年(平成2年)に登録された生食用の「信陽」もあります。

信山丸(しんざんまる)

信山丸(しんざんまる)

酸味がやや強めですが生食が可能で、ジャムやシロップ漬けなどの加工用にも適します。果実は楕円形で橙色、果肉は緻密で果重は40~50g前後とやや小ぶり。生産数が少なく質が高いことから高級アンズとしても人気です。出荷は6月下旬頃から。

ハーコット

ハーコット

カナダ生まれの品種で1979年(昭和54年)に日本に導入されました。酸味が少なく甘味が強いので生食用として栽培されています。果実は橙色で、80~100gと大きめの楕円形。あまり日持ちしないので購入後は早めに食べましょう。7月上旬頃から出荷されます。

ゴールドコット

ゴールドコット

ハーコットと同様、酸味が少なく糖度が高いので生食できます。アメリカで誕生した品種で、1967年(昭和42年)に日本へやってきました。果形は円形で果重は50g前後の中玉、黄色がかった橙色をしています。収穫時期は7月中旬頃。

各地の年間収穫量 あんず

円グラフと下表の割合(%)が違うときは?

上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。

下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。

上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。

また、ページ上部の「基礎データ」にある「おもな産地」の数値は、下表の割合(シェア)を四捨五入したものです。

出典:農林水産省統計

2021年のあんずの収穫量のうち最も多いのは青森県で、約1,250トンの収穫量があります。2位は約595トンの収穫量がある長野県、3位は約2トンの収穫量がある広島県です。

栽培面積・収穫高の推移

出典:農林水産省統計

2021年のあんずの栽培面積は約185ヘクタール。収穫量は約1,849トンで、出荷量は約1,416トンです。

主要生産国(上位5か国)

出典:FAOSTAT(2021年)

アンズ(ウメ)生産の上位5か国は、トルコ、ウズベキスタン、イラン、イタリア、アルジェリアです。1位のトルコの生産量は年間約80万3,000トンで全体の約21%を占めています。2位のウズベキスタンは年間約45万1,263トンで全体の約12%、3位のイランは年間約30万5,932トンで全体の約8%です。

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