果物の種をまくと同じ果物ができる?
ほとんどの場合同じにならない
りんごや桃、梨などを食べたあとに、それらの種をまいて、同じ実が育つかどうか試してみたことのある人もいるでしょう。しかし残念ながらほとんどの場合、同じ品種の果実はできません。
その理由は、種のもつ遺伝子が母親とは異なるためです。果物の種は、果実と同じ母親の情報と、花粉である父親の情報が掛け合わさっています。つまり種=母親×父親となり、母親とは別のものになるのです。
梨やりんごは自家不和合性
梨やりんご、さくらんぼなど多くの果物は「自家不和合性(じかふわごうせい)」といい、同品種の樹だけでは受粉しません。そのため他品種の花粉を受粉させる必要があり(例えば梨の「豊水」の花の雌しべに「新興」の花粉を受粉させる)、その結果それらの種は母親とは異なる品種になります。
自家和合性でも可能性は低い
なお、1本の樹だけで受粉する自家和合性(じかわごうせい)のものであっても、純系に遺伝しないため、種から同じ品種のものはできないそうです。
また、りんごなど1つの果実に複数の種がある場合、種ごとに遺伝子が異なるため、それぞれの種から育ってできた果実は「兄弟」のようなもので味が違う別の品種になります。
種から同じものが育つものもある
ただし、柑橘類の一部やマンゴーの一部には種から同じものが育つことがあります。これは「単胚種」か「多胚種」かという点で決まります。単胚種とは、種の中に胚が1つしかないもので、多胚種は種の中に2つ以上の胚があるものをいいます。
そして胚が1つの単胚種だと、その種は雑種(母親×父親)となり母親と同じ果実になりません。しかし、胚が複数ある多胚種の場合、雑種は1つの胚だけで、ほかの胚は母親のクローンとなる「珠心胚」となり母親と同じ性質のものが育つのです。温州みかんやポンカンやマンゴーのケンジントンプライド種などは多胚種なので、うまく育てば母親と同じ品種の実がなることがあります。
早く実をならしたいなら接ぎ木
ちなみに家庭菜園で果物を育てる場合は、種からではなく「接ぎ木」から育てるのが一般的です。これは親と同じ性質を持つ穂木を使うことで、容易に同じ品種の果実を作ることができ、さらには結実までの年数を短くできるからです。温州みかんを種から育てると、実がなるまでに20年ほどかかるといわれますが、接ぎ木だと3から5年で実がなるそうです。