香酸柑橘 Citrus
基礎データ DATA
香酸柑橘の概要
一般的なみかん類とは違って酸味が強く、生食にむかない柑橘類を「香酸柑橘(こうさんかんきつ)」といいます。代表的なものが「レモン」や「ゆず」、「ライム」などです。これらは香りがよいため、果汁をしぼって調味料に加えたり、ジュースなどに利用します。
なお、レモンは「レモン」のページで紹介しています。また、きんかんは香酸柑橘ではありませんが、このページで紹介しています。
香酸柑橘の歴史
「ゆず」は中国が原産で、飛鳥・奈良時代にはすでに日本に伝来していました。ゆずの仲間である「すだち」や「かぼす」も、江戸時代には日本で栽培されています。
「仏手柑(ぶっしゅかん)」はインド北東部、「きんかん」は中国、「だいだい」はヒマラヤが原産です。これらは江戸時代にはすでに日本に伝わっていたようです。また、「シークワーサー」は、南西諸島と台湾に自生していたもので、沖縄の特産として有名です。
香酸柑橘の栄養と効能
おもな栄養成分(可食部100g中)
ゆず:カリウム(210mg)、ビタミンC(40mg)
すだち:カリウム(140mg)、ビタミンC(40mg)
かぼす:カリウム(140mg)、ビタミンC(42mg)
だいだい:カリウム(190mg)、ビタミンC(35mg)
シークワーサー:カリウム(180mg)、ビタミンC(11mg)
ライム:カリウム(160mg)、ビタミンC(33mg)
きんかん:カリウム(180mg)、ビタミンC(49mg)、ビタミンB1(0.1mg)、食物繊維総量(4.6g)
期待される効能
風邪予防、美肌効果
香酸柑橘にはクエン酸が多く含まれているため、疲労回復や食欲増進に効果があります。
また、ビタミンCが多いので風邪予防や美容効果にもよいとされます。ただし酸味が強く一度にたくさんの量を摂取することは難しいため、生食用のみかん類に比べるとあまり期待はできないでしょう。
しかし丸ごと食べるきんかんだけは別です。疲れを取るビタミンB1や便秘によい食物繊維、果物の中ではすだちに次いでカルシウムも多く含まれていてさまざまな健康効果に期待できるでしょう。
より詳細な栄養成分については、「栄養成分(グラフ)」もしくは「栄養成分(一覧表)」に掲載しています。
栄養成分表を見る
香酸柑橘の種類
ゆず(柚子・柚)
100~120gくらいの大きさで、芳香と適度な酸味を持っている香酸柑橘です。果汁を調味料に加えたり、果皮を細かく切って七味唐辛子に入れるなど、食味のアクセントとしてよく利用されます。また国内では冬至の日に「ゆず湯」に入るという風習もあります。なお、一般的な「黄柚子」は秋から出回りますが、初夏には「青柚子」も流通します。基本的に通年出回っていますが、12月が最盛期です。
すだち(酢橘)
「ゆず」の近縁となる香酸柑橘で、果実は30~40gと小さめ。徳島県の特産として有名です。適度な酸味と香りがあり、果汁は焼き魚やマツタケ料理などに利用されます。別名「すたちばな」ともいい、これがなまって「すだち」となったといわれます。収穫時期は果皮がまだ緑色の8~10月頃で、12月頃までが旬。なお、さらに熟すと果皮が黄色くなりますが、緑色ほうが風味豊かです。
かぼす(香母酢)
「すだち」と同じく「ゆず」の近縁種で見た目も似ていますが、こちらは100~150gと大きめで酸味が強いのが特徴です。大分県の特産で、ふぐ料理や鍋料理、焼き魚の風味づけとして利用されます。収穫時期は9~10月頃で果皮に独特の香りがあります。また「すだち」と同じく緑色の果皮は熟すと黄色くなりますが、風味のよい緑色の時期がおすすめです。
ライム
レモンのような強い酸味と独特の香りがあり、おもにジュースやカクテルに利用されています。サイズは30~100gで、レモンより小さめの「タヒチライム」と、それをさらに小さくした「メキシカンライム」があります。おもにメキシコやエジプト、インドで栽培されていて、日本に輸入されるのはほとんどがメキシコ産です。国内の出荷量は少ないですが愛媛県や香川県、大分県などで栽培されています。
シークワーサー
沖縄県の特産として有名な香酸柑橘で、酸味の中に適度な甘味もありさわやかな香りがします。料理のアクセントとして利用されるほか、果汁を薄めてジュースとしても用います。7月~1月頃に収穫されますが、飲料用にするなら甘味が出てくる10月過ぎのものがおすすめ。また12月頃の完熟果は果皮がオレンジ色になり生食が可能です。なお、呼び名は「シークヮーサー」や「シークワシャー」、「シークァーサー」などさまざま。
だいだい(橙)
200gくらいの大きさの「かぶす」と、150gくらいの「回青橙(かいせいとう)」の2つの種類があります。どちらも酸味が強くポン酢によく利用されます。また果実が落下しにくいため縁起がよいとされ、お正月の飾り付けにも使われます。ちなみに回青橙は、冬になると果皮がオレンジになりますが、春になるとまた緑に戻ってしまうためこのような名前になりました。おもに和歌山県や愛媛県、広島県などで栽培されていて、出回り時期は10~12月頃。「サワーオレンジ」とも呼ばれます。
じゃばら
おもに和歌山県北山村で栽培されている香酸柑橘。130g前後で果皮は緑色~黄色。果汁が豊富で香りがよく、強い酸味とほのかな苦味を持っています。来歴は不明ですが、ゆずや九年母(クネンボ)などが交雑したのではないかと考えられています。ドリンクやハチミツ漬け、ポン酢などのほか、ジャムやお菓子などにも利用されています。
仏手柑(ぶっしゅかん)
果実が手の形に似ていることからこのような名前が付けられました。大きさはバナナくらいで10~20cmほどになります。果肉がほとんどないため、おもに観賞用として用いられますが、砂糖漬けやジャムにして食べることもできます。出荷量は非常に少ないですが、鹿児島や愛媛県、和歌山県などで栽培されています。
きんかん(金柑)
果実の大きさが10gくらいで、「丸きんかん」「福州きんかん」「長きんかん」「寧波(にんぽう)きんかん」などの品種があります。果肉が酸っぱく果皮に苦みがありますが、甘味も持ち合わせているので皮ごと食べられます。また砂糖漬けやマーマレード、金柑酒などにも利用されます。11月~3月頃まで店頭に並びます。
各地の年間収穫量 ゆず
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
また、ページ上部の「基礎データ」にある「おもな産地」の数値は、下表の割合(シェア)を四捨五入したものです。
出典:農林水産省統計
2021年のゆずの収穫量のうち最も多いのは高知県で、約1万1,768トンの収穫量があります。2位は約2,817トンの収穫量がある徳島県、3位は約2,674トンの収穫量がある愛媛県です。
栽培面積・収穫高の推移
出典:農林水産省統計
2021年のゆずの栽培面積は約2,218ヘクタール。収穫量は約2万2,917トンで、出荷量は約2万1,498トンです。
香酸柑橘の輸入先と輸入量
出典:財務省統計
香酸柑橘類は6か国から輸入されています。輸入先トップはメキシコで輸入量は約1,982トン、香酸柑橘類輸入量のほとんどを占めています。2位はニュージーランドの約9.2トンで割合はそれほど多くありません。3位はベトナムの約7.5トン。4位は約4.8トンのニュージーランドと続きます。
香酸柑橘の輸出先と輸出量
出典:財務省統計
2023年には6か国に輸出され、トップは約75.4トンの台湾です。2位は約33.2トンの香港、3位は約5.3トンのフランスと続きます。
年別輸出入量
出典:財務省統計
香酸柑橘類は輸入と輸出が行われています。2023年の輸入量は約2,007トンで輸入額は約14億7,820万円。輸入量は前年と比べると110トン(約6%)増加しています。また、輸出量は約118トンで輸出額は約1億4,262万円。輸出量は前年と比べると21.8トン(約16%)減少しています。
主要生産国(上位5か国)
出典:FAOSTAT(2021年)
レモン&ライム生産の上位5か国は、インド、メキシコ、中国、アルゼンチン、ブラジルです。1位のインドの生産量は年間約377万6,000トンで全体の約18%を占めています。2位のメキシコは年間約310万2,046トンで全体の約14%、3位の中国は年間約258万8,549トンで全体の約12%です。
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