いちじく 無花果 Fig
基礎データ DATA
イチジクの概要



いちじくは漢字で「無花果」と書きますが、花がないわけではありません。いちじくは実の中に小さな花をつけるため、外からは確認できないのです。果実を半分に切ると赤いつぶつぶがたくさんつまっていますよね。あれが花です。いちじくは花の部分によって独特の食感を生み出していたのです。
一部のイチジクは「イチジクコバチ」という昆虫によって受粉が行われますが、これはエジプトイチジクなど野生種に見られる特性です。国内で栽培されているイチジクは受粉しなくても果実が大きくなる「単為結果」という性質を持つため、昆虫による媒介はありません。
ちなみに「いちじく」という名前の由来は、毎日1つずつ熟すことから「一熟」→「いちじく」になったという説や、ひと月で実が熟すため「一熟」→「いちじく」という説もあります。また呼び名としては南蛮柿(なんばんがき)、唐柿(とうがき)ということもあります。
イチジクの歴史


いちじくは古代エジプトの壁画にもブドウとともに描かれており、さらには旧約聖書にも数多く登場する歴史ある果物です。あのアダムとイブが裸を隠すのに使ったのもいちじくの葉です。
はるか昔にアラビア半島で誕生したいちじくは、少なくとも6000年前には栽培が始まっていたといわれています。その後ヨーロッパからペルシャ、中国へと伝わり、日本へは江戸時代に中国から長崎に運ばれました。当初は薬用として栽培されていましたが、生産量が増えるにつれ食用として親しまれるようになりました。
イチジクの栄養と効能
おもな栄養成分(可食部100g中)
カリウム(170mg)、食物繊維総量(1.9g)
期待される効能
高血圧予防、動脈硬化予防、脳梗塞予防、心筋梗塞予防、便秘改善
イチジクは比較的多くカリウムを含んでいます。カリウムは血圧を下げる効果があるので、高血圧や動脈硬化などの予防に役立つでしょう。ペクチンをはじめとした食物繊維も多く含まれているので便秘改善にも期待できます。
また、イチジクにはフィシンというタンパク質分解酵素が含まれています。食後のデザートとして食べれば消化を促進してくれるでしょう。切断部から出てくる白い液体にもタンパク質分解酵素は含まれていて、イボ取りなどの民間療法に使われています。
より詳細な栄養成分については、「栄養成分(グラフ)」もしくは「栄養成分(一覧表)」に掲載しています。
栄養成分表を見る
イチジクの種類
桝井ドーフィン

国内で販売されるいちじくの約8割が「桝井(ますい)ドーフィン(ドウフィン)」です。1909年(明治42年)に広島県の桝井氏がアメリカから日本に持ち帰ったもので、栽培のしやすさと日持ちのよさから全国に広まりました。熟すと果皮は赤褐色になり、白い果肉の中心が淡い赤になります。ほどよい甘味とさっぱりとした風味があり、生食のほかジャムなどにもおすすめ。果重は80~200gと幅広く、8月~10月頃に収穫されます。
蓬莱柿(ほうらいし)

370年ほど前に中国から伝わったといわれる品種で、日本に定着して長いため「在来種」や「日本いちじく」とも呼ばれます。おもに関西以西で栽培されていて、適度な甘味とほのかな酸味があり上品な味わいです。ただ、お尻の部分が割れやすく日持ちが悪いため関東方面ではあまり出回りません。果実は丸みがあり、平均サイズは60~100g程度と小ぶり。出回るのは8月下旬頃からになります。
とよみつひめ

福岡県で生まれた品種で、糖度が16~17度になる甘味の強いいちじくです。出願者が所有する育成系統を交配したもので2006年(平成18年)に品種登録されました。果皮は赤紫色で果肉は緻密でジューシー。旬は8月中旬頃からです。
ビオレ・ソリエス

果肉がやわらかく糖度が20度以上にもなるフランス原産のいちじくです。果皮の色は深い紫色をしていて、果実のサイズは50~100g程度とやや小さめ。果頂部が裂けにくいのが特徴です。佐渡や一部の地域でハウス栽培されていますが、流通量は多くありません。
スミルナ

おもにトルコで生産され、ドライフルーツとして利用されています。果皮が白く、乾燥させると甘味が凝縮されます。カリフォルニアで生産されるスミルナ種の白イチジクは「カリミルナ」と呼ばれ、こちらも乾燥いちじくとして親しまれています。またイタリア原産の「カドタ」という品種も白いちじくで、おもに乾燥や缶詰用として利用されています。
各地の年間収穫量 いちじく
円グラフと下表の割合(%)が違うときは?
上の円グラフの割合(%)と下の表の割合(%)の数値が違うことがありますが、その場合は下表のほうが正しい数値です。
下の表は出典である農林水産省のデータに記されている「全国の合計値」から割合を計算したものです。
上の円グラフも農林水産省のデータですが、こちらは全国ではなく主要生産地のみのデータなので、値が公表されていない都道府県は含まれていません。
また、ページ上部の「基礎データ」にある「おもな産地」の数値は、下表の割合(シェア)を四捨五入したものです。
出典:農林水産省統計
2021年のいちじくの収穫量のうち最も多いのは和歌山県で、約1,844トンの収穫量があります。2位は約1,698トンの収穫量がある愛知県、3位は約1,273トンの収穫量がある大阪府です。
栽培面積・収穫高の推移
出典:農林水産省統計
2021年のいちじくの栽培面積は約831ヘクタール。収穫量は約1万142トンで、出荷量は約9,171トンです。
イチジクの輸入先と輸入量
出典:財務省統計
日本に輸入されているいちじくはすべてアメリカから来ています(アメリカ以外に統計データがありません)。輸入量は約2.6トンで、輸入額は約389万円。1キログラム当たりの単価は約1,491円です。
年別輸出入量
出典:財務省統計
いちじくは海外から輸入されています。2023年の輸入量は約2.6トンで輸入額は約389万円です。2023年の輸入量とその前年の輸入量は変わりません。
主要生産国(上位5か国)
出典:FAOSTAT(2021年)
イチジク生産の上位5か国は、トルコ、エジプト、アルジェリア、モロッコ、イランです。1位のトルコの生産量は年間約35万トンで全体の約28%を占めています。2位のエジプトは年間約18万7,873トンで全体の約15%、3位のアルジェリアは年間約11万2,267トンで全体の約9%です。
果物統計のページに移動